【その3】存在しないアイドルについて

今回製作したZINE「存在しないアイドル」のメイキングです。

109 北野胡夏の10年9曲

https://shirufo.base.shop/items/128004340

7月、8月くらいになると主人公の設定がちょっとずつ固まってきました。
北野胡夏。秋田県出身で弟の大学進学費用を稼ぐために上京してきた。イメージカラーは緑……など、とりあえずざっくりと決めていきます。

地下アイドルのプロフィールページもいくつか参考にしました。ニックネームとか、尊敬するアイドルが誰かとか「シチューにご飯はアリ派かナシ派か」とか。自分の似顔絵を描いて載せてるのもいいなと思ったりしたんですが、入れるのを忘れたことにいま気が付きました。やればよかった。

【8.11】

割り箸がきれいに割れなかった
欲しいものが100均になかった
思っていた感じのカレーじゃなかった
はじめからカゴに入れればよかった
タモリ倶楽部の録画を忘れて
あの子はもう助からない

全然採用しませんでしたがメモに残っていました。
韻を踏んでいるので胡夏のヒップホップ期の歌詞に使おうとしてたのかもしれません。最終的には「シガダネ」という秋田をディスる曲になってます。

8月に「非正規雇用のシンデレラ」の原型がほぼ出来上がりました。元ネタは「仮契約のシンデレラ(私立恵比寿中学)」です。貧困アイドルとして少しだけ有名になった北野胡夏の、いちばん売れた曲ということにしています。

・写真やイラストをどう入れていくか? デザインはどうするか?
・どういう結末にするか?

を、この頃から考え始めました。

写真(CDジャケット)についてはかなり悩んだのを覚えています。
【名曲たち】ではそれぞれの曲のジャケットも一部掲載しています。童謡やアニソン、シンガーソングライターの曲なんかもあったので割と自由にデザインしたのですが、アイドル曲となるのジャケットに本人の顔が映っていないのはかなり不自然です。かといって全編が文章だけだと寂しい。
自分が北野胡夏に扮装して撮影するか?というのもわりと真面目に検討しました。
結果として、ジャケットは掲載しないでグッズやチラシ、サインなどを載せていくという方針にしました。イラストは胡夏自身がイラストを描くのが好きで、そこからトレースしたという設定に。

コナチュー。北野胡夏がサイン色紙などに良く描いていたイラスト。実家に生息していたネズミがモチーフになっている。首にまかれているのは柏餅(胡夏の好物)の葉っぱ。

デザインに関しては、ストーリーが「北野胡夏のファンである堀内しるしが、その存在を知ってほしくてつくったZINE」なので、あえてものすごく雑な、手作り感あふれる冊子にしようかというのも考えました。デザインがあまりに整ってると「アイドル熱」の部分とちぐはぐになるかな?と。いろいろ検討しましたが「(堀内が)デザイナーだから装丁はむしろ凝っている」のが自然だろう、という着地に。それに応じて手作り製本から業者発注に変えています。

結末について。
「アイドルが10年で引退するまでを描く」というのは決めていました。
その辞め方をどうするか。

特別な存在になりたくてアイドルになった→マイノリティとして孤独になった……という終わり方を当初は考えていました。具体的には胡夏のセクシュアリティについて(歌詞を読めばわかるようにして)描き、やがて活動とのずれが生まれていくという流れ。ただ悲劇的なものではなく前向きなラストを当初から考えていました。

その後に出てきた案としては、胡夏のアイドル活動が前衛的なものに変わっていく……というのがありました。たとえば道端に落ちてる石を拾って<新曲>として売る、みたいなことをし始めて、それでもファン(私)はついていく。それによってファンたちは<ゴミ箱の中の丸まったティッシュ>や<河川敷を飛んでるレジ袋>さえも胡夏の新曲ではないか?と思うようになって、それはそれで幸福なのではないか……という結末を考えました。

【9.26】

引退したのはあくまでアイドル。
いまでも彼女からはメールが届く。
新作をさがす日々が続いている。三ヶ月に一度のこともあれば、三年に一度の場合も。
楽曲の形式をとってない「新曲」が。いないというものは、さがしてないんだ。
今日、商店街を歩いていたら正面から自転車が向かってきた。通り過ぎる瞬間に「しね」と言われた。
私は、それを「こなつの新曲」と思った。

当時のメモにはこのように書いています。

けっこういいアイディアじゃないかと思いましたが、今回はサイコ、ホラー寄りでない方向でいこうと思って没にしました。
「霊の仕業」「サイコな人がやったこと」というのはわかりやすけれど、それで「済んじゃう」というか、もう少し読み終わったあとの現実につながるような別のオチをつけたいなと思いました(こっくりさんの部分で既にホラー要素は入れてますし)
最後まで読んだ方からすると結局ホラーじゃん!と思うかもしれないですが。。。対処可能な「怖さ」に留めて語りたいと思った次第です。なので、この結末は無しにしました。

結果として「北野胡夏というアイドルの存在がネット上で見つからない理由」に説明がつき、「私がZINEをつくった動機」というところとも地続きになったので、なかなか良い結末が見つかったと思っています。<軸とテーマからずれなければ、途中の流れも結末も書いているうちにどんどん変えてOK>というのは自分がストーリーをつくるときのルールにしています。


その上で、タイトルは「109 北野胡夏の10年9曲」に決定しました。
10年10曲というキリのいい数字で終わらなかった、というのもこのアイドルを象徴しています(後付けです)

表紙と裏表紙。家のプリンターでモノクロでテストしました。果たしてどういう仕上がりになるのか。。。

裏表紙には歌詞タイトルと作詞・作曲者を入れています。

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