今年の映画ベスト3

【第3位】
プロミシング・ヤング・ウーマン

強烈な作品だった。
キャリー・マリガン演じる主人公は、カフェで働く元医大生。
彼女は夜ごとバーで酔いつぶれたふりをして男性客の自宅にわざと連れ込まれ、制裁を加えるのを日課としている。
きっかけは、医大時代の親友のレイプ事件。
親友を死に追いやった男が近々結婚すると聞いた彼女は、関係者らに復讐を実行する。

女性蔑視、性差別、ホモソーシャル(女性及び同性愛を排除することによって成立する、男性間の緊密な結びつきや関係性)。そして何よりも、マチズモ(男性が優位でいられる構図や、それを守り、強制するための言動)。

男性は「若くて有望」であるからとつねに守られ、立身出世のコースを進む。
その途中で傷つけられ、いまも虐げられ続けている「若くて有望な女性」は?
男たちが「何を」大した問題だと思っていないのか。

自分の中にもすっかりマチズモがこびりついている…と自覚させられるというのが、観ていて恐ろしい。長い年月をかけてびっしりはりついた苔のように、それらはきっと学校生活や社会の中で蓄えられてきたんだろう。この物語の中の男たちにワタシはものすごく見覚えがあるし、一歩間違えれば自分もそういう人間になっていた(し、気を付けないとこれからなる可能性もある)。まったくもって他人事ではないのだ。

いま観られるべき映画であるし、振り返って参照されるべき映画だと思う。

あと、もうひとつ。
こういう映画はよく宣伝文句として「復讐エンターテイメント」なんていわれるが、そんな生ぬるい言葉で語っていいのかとても疑問だ。この物語を見て「うわーひでえ話」と思ったり、復讐劇を見てスカッとした気分に浸ったりできるのも、ひとつの特権なのだと思う。


【第2位】
インクレディブル・バルク

映画を観る理由のひとつに「今まで観たことがないものが観たい」というのがある。あくまで個人的に。
たとえば年末の一大イベントと化した「M-1グランプリ」のなかで、時として「完成されたなしゃべくり漫才」よりも「今までに観たことがなかった漫才」が評価されるように、隅々まで演出の行き届いた映像や、人間の感情の機微を描いた素晴らしい物語よりも、圧倒的に映画を壊しにかかっている映画に惹きつけられることがある。

それが、今年でいえばこの「バルク」だった。
いわずもがな(?)緑色の暴れん坊こと「インクレディブル・ハルク」のパロディである。
設定はほぼ同じだが、本家とは異なり巨大なモンスターは緑ではなく紫色である。
いや、そんなことは問題ではない。問題は、この映画が主要キャラクター以外すべて「CG」だということだ。
街の風景はもちろん、拳銃から出る弾丸や顕微鏡、草花などもすべてCG。挙句の果てに犬などの動物もCG。
CGというのも、もちろん近年の実写と見紛うほどのクオリティの代物ではない。
いちばん近いのでいうと、昔の「天才てれびくん」のようなCGといえば伝わるだろうか。
あるいは「バーチャファイター並」。

かなりどうかしている。
低予算を逆手に取っているのだろうけど、物語自体も大分やけくそだ。
けれど、ふしぎと最後まで観れる。
制作側が意図しているかどうか不明だが「これは映画か?」をつねに観る側に突き付けてくる。
映画ではない、というのは簡単だ。でも、ならば何が映画なんだろう?
演者含めすべてが実写なら映画なのか?ならば、アニメ映画は?
クオリティーが低いから映画ではないのか?ならば、クオリティーで映画の良し悪しは決まるのか?

一部の熱狂的なファンを持つ「サメ映画」やトロマ映画にも同じことがいえると思う。
ハリウッド式の脚本(AからはじまりA’になる方式)と、ビッグバジェットの作品だけが「映画」なわけがない。
何が「人の心を満たす」作品になるかは、誰にも(映画製作者にも)わからないのかもしれない。


【第1位】
ヘンリー・フール

アメリカのインディーズ映画界の巨匠といわれるハル・ハートリーの作品。
まるでシティーボーイズのコントのような「間」と脱力のコメディ【シンプルメン】で、すっかり虜になってしまった。

ヘンリーという男が街にやってくる。
男は犯罪者である。詩人である。常にタバコとビールを求めている。
だめだ。とにかくだめな人間。分厚い詩作のノートを手に「傑作を書いた」とのたまうが、内容は一切提示されない。
登場人物によれば「駄作」。しかし、それは個人的な感覚による評価であり、観客には明かされない以上、どこまでも不確定ではある。
わたしたちはヘンリーの振るまいから才能の有無について考えたりする。
こんなひどい男に詩の才能があるのか?ひどい男だからこそ才能があるのか?
そんなことを考えているうちに、ヘンリーから目が離せなくなる。いつのまにか肩入れしている。

これは今年観た【ピースメイカー】とも共通している。
どうしようもない人間にも、そうなってしまった要因が必ずあり、そして「それを踏まえてもなお救いようがないダメさ」を目の当たりにしつつも、ある点ではものすごく魅力的な人間である……という実に「人間味」にあふれたキャラクター造詣がされている(ワッシーとの抱擁が泣ける)。要するに、実在感があるということかもしれない。

はたしてどん底でも自分の才能や存在意義を信じられるか?
損得なしで他人の才能を信じ、認められるか?

そんなことを考えた。

あと、〇〇をしながらプロポーズするシーンは、映画史に残る美しいシーンだと思う。
結果的にプロポーズに「なってしまっ」て、それを受け入れているというところがおかしくも美しい。


そして驚くことに、この作品は「三部作」(トリロジー)の第一作目だ。
【フェイ・グリム】はヘンリーの元妻が活躍するスパイもの。【ネッド・ライフル】はヘンリーの息子の逃避行。
どれもたのしい映画なので是非みてほしい。6パックの安ビールが飲みたくなる。



【4位以下】
4.リトルガール
5.スパイの妻
6.ボディ・スナッチャーズ
7.最も危険な年
8.マイマイ新子と千年の魔法
9.セイントモード 狂信
10.荒野に希望の火をともす


【レンタル系ホラー】

今年も「ほんとにあった!呪いのビデオ」の低調が続いたように思う。

スタッフ刷新で菊池の協力もある(らしい)が、会心の一作が出ていない気がする。この手のジャンルをけん引してきた老舗なのだから、保守的にならずに冒険してほしい。怪異の原因が「子供を失って死んだ女の怨念」ばかりになっている気がする。
今年はユリイカでも「Jホラーの現在 ―伝播する映画の恐怖」という特集が組まれていて、その中でも「ジャパニーズホラー」と「ミソジニー」の関連性について言及されていた。あらためてこの点について考えたいと思ったし、その上で業界にも新しい心霊表現が生まれえるのではないかという期待も抱いた。

一方で、「呪いの黙示録」シリーズが頑張っている。というか、アムモ(メーカー)が頑張っている。
調査パートにも捻りが加えられていて飽きない。どの章か忘れたが「心霊スポットマニア」が怪異の元凶というのも今らしくてよかった。さすが寺内康太郎。業界は早急にテラコーに長編ホラーを撮らせるように。
まったく検証がない&投稿映像に繋がりを持たせるということでおなじみ「呪われた心霊動画XXX」も変わらずイイ。過去の水準よりは劣るけれど、一作品(DVD)に必ずひとつはイイ映像がある。
話毎の繋がり、というのは一巻におさめずに、巻をまたいでもどんどんやっていっていいと思う。
もっとざっくりとつないでも、ユーザーはついてくる。
それは今年最もホラー界隈を盛り上げた(はずの)「フェイクドキュメンタリーQ」を観てもあきらかだと思う。

「フェイクドキュメンタリーQ」は、特に【ファイナルカウントダウン】の、意味不明な映像の連打がおそろしかった。





トラホンピータ、ふっきんはいきん、バタフライ・スコトーマ、ななみが帰ってきた、あなたは春田君まであと何周?

意味がわかりそうで、わからない。
不気味で不安定。落ち着かせてくれないタイトルと映像に心を揺さぶられた。
「フィルムインフェルノ」のギリギリ残された「ガチ感」にもたまらないものがあった。XXX(トリプルエックス)もエンタメとしては素晴らしいけれども、たまにやりすぎてしまうきらいがある。DVDリリースされる消費品だからオチとなるショック描写がどうしても必要なのだろうけれど。いきすぎないのも「サービス」だと思って、ちょうどいい不気味なところで留まってもいいのではないかと思う。

こんな感じです。
来年もホラーと共にあらんことを!(ベスト3には入れてないけど)


【今年観た映画】
いつかギラギラする日
GONIN2
実録外伝大阪電撃作戦
残侠伝説 覇王道
外道
北陸代理戦争
浅草キッド
セイントモード狂信
世界の終わり 旅のはじまり
ボディスナッチャーズ
ヘンリーフール
フィルグリム
ネッドライフル
スパイの妻
ネオチンピラ鉄砲玉ぴゅ〜
コンフリクト最大の抗争シリーズ
織田同志会シリーズ
リトルガール
初恋の悪魔
ゴーストオブマーズ
ウィリーズワンダーランド
プロミシングヤングウーマン
ハロウィン2
クレイジーキラー悪魔の焼却炉
血みどろの入江
トランスジェンダーとハリウッド
スーサイド・スクワッド
インクレディブル・バルク
フェイクドキュメンタリーQ フィルムインフェルノ
リサと悪魔
226
サウスバウンド
ヒルコ 妖怪ハンター
荒野に希望の火をともす
呪怨 呪いの家
ピースメイカー
殺しのドレス
湯殿山麓呪い村
マーシャPジョンソンの生と死
最も危険な年
浮き雲
THE FIRST SLAM DUNK
ガメラ
ガメラ2
ガメラ3
マイマイ新子と千年の魔法
オカルトの森へようこそ!

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